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リテールメディアのビジネスモデルを解説!広がる小売業の未来とは
最終更新日 2024年9月17日(Tue)
記事作成日 2024年4月25日(Thu)
小売企業の新たな取り組みとして「リテールメディア」の市場が急拡大しています。ドラッグストアやスーパーマーケット、ECサイトといった身近な大手企業が続々とリテールメディアに参入していることから、市場への進出を考えている企業も多いかもしれません。
ただ、リテールメディアは比較的新しいビジネスモデルであり、実情を十分に理解できていない小売企業担当者の方もいるでしょう。本記事では、リテールメディアの構築を検討する小売企業に向けて、ビジネスモデルの詳細を解説します。
目次
リテールメディアのビジネスモデルとは?概要を紹介
そもそもどのような取り組みを「リテールメディア」と呼ぶのか、基礎知識として把握しておきましょう。
リテールメディアとは、小売企業が主体となって展開する広告システムのこと。小売というのは実店舗だけでなく、ECサイト事業をおこなう企業も含まれます。
実店舗やECサイトでスペースを設け、メーカから依頼を受けて広告を流すなどしています。
例えば、ドラッグストアやコンビニに設置されたディスプレイでCMが流れているのも、リテールメディアの活用事例の1つです。
国内リテールメディアビジネスの市場規模
日本国内のリテールメディア事業は、2020年代から急激に活発化しました。業界の現状を知るために、デジタルマーケティング系の某企業が発表した市場規模調査をチェックしてみましょう。
この調査では、2020年からの市場規模と、市場の成長予測が発表されました。
まず市場規模は、2020年までに右肩上がりの成長を遂げていると推計されています。2020年当初はECサイトを中心とした市場であったものの、店舗事業者も順調に規模を拡大しました。
ECサイト | 店舗事業者 | |
2020年 | 2,202億円 | 90億円 |
2021年 | 2,848億円 | 135億円 |
2022年 | 3,405億円 | 220億円 |
そして2023年から2027年までの4年間で、市場規模はECサイト・店舗事業者で総合して9,300億円を超えると予想されています。
(画像引用:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施~リテールメディア広告市場は2023年に3,625億円、2027年には約2.6倍の9,332億円と予測~)
ちなみに別のマーケティング系企業による調査では「リテールメディアの導入意向がある小売企業は8割以上」という結果となりました。
(画像引用:<2024年の市場規模は420億円と言われるリテールメディア>インストアリテールメディアの国内の導入率は63%ということが判明!導入検討における課題1位は「初期投資や導入コスト」)
このようにリテールメディアは、今後とも成長を期待できる注目の市場です。小売企業はもちろん、広告を出稿するメーカーからも関心を集めており、さらなる市場の発展が見込まれています。
リテールメディアのビジネスモデルからわかる日本の小売企業の3つのメリット
2027年までに市場規模9,300億円越えと見込まれるように、リテールメディアはなぜこれほどに企業からの関心を集めているのでしょうか。
リテールメディアの構築により日本企業が得られるメリットに注目し、市場の魅力を探っていきましょう。
1.収益源を増やせる
リテールメディアでは、広告主であるメーカーから掲載料をもらうことで、新たな収入源としています。
また、日本企業のリテールメディアでは、完全報酬型での広告受注が増えてきました。それにより、例えばクーポンの利用数やクリック数といった成果に比例し、て青天井に収益が発生します。
小売業で課題となりがちな「利益率の低さ」を、リテールメディアによる収益でカバーできるでしょう。
2.自社で集めたデータを活用できる
多くの小売企業で、ECサイトの会員登録制度や実店舗のポイントカード情報で、あらゆるデータを集めています。
リテールメディアでは、こういった顧客データを活用し、広告主に対して付加価値を提供できます。
例えば、ポイント付与を目的とした会員制度とPOSシステムを連動している実店舗で考えてみましょう。商品Aをよく購入している顧客に対し、ポイント付与用のアプリ内で関連する商品Bの広告を流す、といった取り組みが可能です。
小売企業を持たないメーカーでは今まで、こういった顧客情報を自ら正確に分析することがほぼできませんでした。そのため顧客情報を十分に活用できると、広告主からの満足度をさらに高められます。
3.ユーザー体験の向上を目指せる
ここまで、小売企業・広告主(メーカー)間の「BtoB」にあたるメリットを紹介してきました。しかしそれだけでなく、リテールメディアの普及でユーザー(消費者)への価値提供も兼ねられます。
小売企業が持つデータを上手に活用できると、顧客の趣向に合わせた広告配信が可能となるからです。リテールメディアでは、小売・広告主だけでなくユーザーにとってもプラスな、三方よしの状態を作れるでしょう。
リテールメディアのビジネスモデル活用に取り組む日本企業の例
リテールメディアは、構築を手がける小売企業に限らず、あらゆる相手にメリットを与えられるビジネスモデルです。しかし市場規模の伸びやメリットといった座学ばかりを見聞きしても、まだ具体的なイメージがわかない方もいるかもしれません。
そこでこの章では、リテールメディアを活用した取り組みの事例を4つ紹介します。
自社でリテールメディアを作るとしたらどの事例を参考にできそうか、ぜひ考えながらご覧ください。
1.ドラッグストアの顧客情報の活用
ドラッグストアを運営する某企業では、同社のポイントカードアプリとの連携を強みとしたリテールメディアプラットフォームを構築しています。
このドラッグストアでは、会計時にアプリのバーコードを読み取ることで、顧客を識別。すると顧客が日頃どのような購買行動をしているのか、POSシステムとの連携により詳しく分析できます。
同じ企業が運営する7つのドラッグストアで会員情報が共通している点も強み。7ブランド分の顧客情報を1つのシステムで管理することで、効率的なデータ収集が叶いました。
分析したデータを適切に活用できると、会員アプリ内での広告配信で詳細にセグメントしたり、どの顧客が購買にいたったのか正確に効果測定したりできるでしょう。
2.大手コンビニの公式アプリ
大手コンビニの運営元である某社では、実店舗とアプリの両方を広告配信の場として提供しています。
実店舗では、レジ上にあるディスプレイ(サイネージ)にて広告を流しています。2万店を超える店舗数と毎日2,000万人以上ののべ利用者数という実績が大きな強みです。
さらに公式アプリでは、主にバナーやクーポン型の広告で商品を訴求しています。アプリ内の決済機能・ポイント機能とPOSシステムを連動させ、顧客情報を取得。購買行動から好みを分析して広告を流したり、特定の商品の購入から時間が経っている顧客へクーポンを渡したりと、精度の高いターゲティングを提供しています。
アプリ広告で工夫しているのは「しつこすぎない訴求にすること」。正確なターゲティングでは、顧客からすると「自分の行動を見透かされているようで怖い」とネガティブに感じさせるかもしれません。
そこで訴求の頻度や伝え方などを配慮し、顧客から広告への拒否感が芽生えるのを防いでいます。
3.スーパーのスキャンカート活用
小売店では、店員と非対面で買い物を完結できる「スキャンカート」が導入されています。
スキャンカートとは、タブレットが取り付けられたショッピングカートのこと。顧客が商品を棚から取るたびにタブレットでバーコードを読み取ることで、会計の時間を大幅に短縮させています。
スーパーやディスカウントストアを手がける某社では、このスキャンカートをリテールメディアとして活用しました。
タブレットの画面で特定の商品のクーポンを配布し、購買意欲を刺激。さらに、顧客の購買傾向によってクーポンの割引率などを変える取り組みをしました。クーポン施策の結果をテストすることで、広告主のマーケティングが成功するよう協力しています。
4.モール型ECサイトの広告枠提供
モール型ECサイトの運営で世界的な実績を持つ某社は、広告を配信できる媒体の多さを強みとしています。
- ECサイト本体
- ライブ配信サイト
- タブレット、
- 生活関連デバイス
- VOD(動画配信サービス)
- スマートフォン用アプリ
このような媒体で、1日のうちに数億人もの顧客へアプローチできることが大きな価値です。
ECサイトに出品している業者でなくても広告を載せられたり、掲載場所に合わせたいくつもの広告形式を提供したりと、メーカーファーストな取り組みが多数組み込まれています。
国内リテールメディアで実現できるビジネスモデルのアイディア3選
リテールメディアのさらなる発展で、メーカーにも顧客にも新たな付加価値を生めることでしょう。
ここからは、今後リテールメディアで叶えられる未来を紹介します。リテールメディアはすでに急激な成長段階を迎えていますが、まだまだ工夫や改良が重ねられると期待できます。
1.インフルエンサータイアップ
主に動画形式のディスプレイ(サイネージ)広告で、インフルエンサーとの協力が可能です。
YouTuberやインスタグラマーといった人たちは、顧客が身近に感じやすい存在。いちユーザーの目線で商品の良さを伝えてくれるので、広告らしさの薄い自然な訴求が叶います。
リテールメディアでは、小売業が持つ顧客情報で、広告を届けたいユーザーを細かくセグメントできます。そのセグメントと相性が良いインフルエンサーを丁寧に選出することで、顧客からのリアクションを最大化できるでしょう。
2.デッドスペースの活用
実店舗型のビジネスでは、一部のスペースがうまく活用できていないケースがあります。商品を陳列できずデッドスペースとなった場所をリテールメディア化すれば、本来では想定していなかった意外な収益源となるかもしれません。
例えば商品棚にできない壁にディスプレイを設置して動画を流すなど工夫できます。ほかにも、レジのすぐ近くや、店舗の入り口で二重扉になったスペースなども、顧客の往来が多くリテールメディア化に最適です。
店舗からすると使い道に困っていたデッドスペースでも、メーカー視点では魅力的な広告場所です。
3.AIによる分析
リテールメディアでは、AIとの掛け合わせも期待できます。相性がいいと予想できるのは、ドラッグストアやバラエティストアでディスプレイ(サイネージ)を使って流す動画広告などです。
例えば化粧品コーナーでの訴求なら、会員アプリと連動して「売り場に女性が立ち止まったときに動画を再生する」といった取り組みができるかもしれません。
また、画面を注視していた時間を計測できれば、動画の視聴維持率やリアクションの計測が叶います。
まとめ:記事のポイントをおさらい
《この記事のポイントを再確認!》
☑️リテールメディアとは、小売企業が主体となる新たな広告媒体のこと
☑️メーカーから依頼を受けた小売企業がECサイトや実店舗で広告を展開
☑️市場規模は2027年までに9,300億円を超えると予想されている
☑️小売企業がリテールメディアを構築するメリットは主に3つ
①収益源を増やせる
②自社で集めたデータを活用できる
③ユーザー体験の向上を目指せる
☑️会員アプリ、店舗ディスプレイ、ECサイトの空きスペースなどあらゆる場所がリテールメディアになり得る
アメリカを皮切りに発展したビジネスモデルですが、日本でも実店舗型の小売企業を中心に、続々とリテールメディアの構築を始めています。「リテールメディア」の用語そのものは知らなくても、店舗やアプリなどで広告を目にしたことがあるユーザーは大勢いるでしょう。
小売企業の新たな価値創造の手段として、リテールメディアは今後一層の浸透が予想されます。ECサイトや実店舗を展開する企業では、自社が持つ顧客情報を価値に変えるチャンスです。そしてリテールメディアによる新たな体験を得られるのは、広告主であるメーカーだけではありません。顧客情報の分析により広告がパーソナライズ化されることで、消費者にも今までにない購買体験を届けられるでしょう。
従来は「仕入れること」「売ること」のみにフォーカスされがちだった小売企業。リテールメディアの構築・運用で、ECサイトや実店舗の有用性をさらに広げてみてはいかがでしょうか。